Abstract : |
雑種成犬を用い, 広背筋弁とsoft Marlex mesh(以下Marlex mesh)を組み合わせた代用気管作成の実験を行った. 1期手術として広背筋を起始部にて切離して筋弁を作成し, 4種類のステント(A:Silicone rodのみ, B:Silicone rodにMarlex meshを巻いたもの, C:Silicone rodにMarlex meshを巻いてステンレスメッシュで補強したもの, D:Silicone rodにMarlex meshを巻いてステンレスワイヤーで補強したもの)を筋弁で巻いて皮下に埋め込んだ. 4週以上の間隔をおき, 2期手術として, Marlex meshが器質化して, それぞれのステントのsilicone rodのみを抜去後に管腔となったものを代用気管とし, 有茎筋弁と一体化となった状態で頸部気管あるいは胸部気管の置換, 再建を行った. 術後は吻合部や内腔の変化を気管支ファイバースコープで観察した. A群(筋弁が代用気管の内腔に露出)や, B群(補強のない器質化Marlex meshのみ代用気管)は内腔の狭窄を来し呼吸困難で死亡するものが多かったが, C群(ステンレスメッシュで補強)では全例crescent typeの狭窄を認めたものの代用気管の脱落はなく長期生存し, D群(螺旋状のステンレスワイヤーで補強)では1頭が7日目に衰弱死したが他の5頭は脱落, 狭窄なく最長21ヵ月生存中である. また, 水素ガスクリアランス法による組織血流測定では, 器質化メッシュは良好な血流が確認された. これらの結果より広背筋弁とsoft Marlex meshを組み合わせて作成した管腔は, meshが器質化されることにより良好な気密性, 親和性が得られるとともに, 組織血流が良好で, 感染に強く再建後の上皮化十分に期待され, 代用気管として臨床応用可能であると思われた. |