Abstract : |
1987年12月より1990年5月までの2年6ヵ月間に行った冠動脈バイパス(以下ACB)症例110例に対し全例に内胸動脈(以下IMA)を使用することを原則として手術を行い, “ACB全例に対するIMAの使用”の可能性について検討した. 対象例110例の内訳は, 急性心筋梗塞7例, AHA不安定狭心症19例, 安定狭心症84例であり, 70歳以上の高齢者が35例を占め, 女性が32例を占めた. 冠動脈病変は, 平均2.5枝病変であり, 左主幹部病変例27例, 陳旧性心筋梗塞71例, 左心機能低下例(EF<40%, 又はLVEDP>20mmHg)28例であった. 手術術式は1例当り平均3.6ヵ所のバイパスを行い, そのうち1例当り1.6ヵ所の吻合をIMAを用いて行った. 同時に行った心手術は, 梗塞切除+心室中隔穿孔パッチ閉鎖2例, 左室瘤切除1例, 僧帽弁交連切開1例, coronary endarterectomy 4例5ヵ所であった. IMAの使用に関しては, 結果的に4例で使用できなかったが, 106例(96%)で使用が可能であった. 手術成績は30日以内の早期死亡7例(6.3%), 30日以降の病院死亡2例(1.8%), 遠隔死亡3例(2.7%)であった. IMAの使用に起因する死亡はなかった. 高齢者, 急性心筋梗塞など従来のIMA使用の非適応例を含めた連続110例のACB症例に対し“ACB全例に対するIMAの使用”を原則としACBを行い106例96%でIMAの使用が可能であった. IMA使用の拡大による優れた遠隔成績を期待し, “ACB全例に対するIMAの使用”を原則としてACBを行った. この原則は日本人においても十分に可能であり, 試みるべき方法と考えられた. |