Authors : |
北村昌也, 今村伸一郎*, 小寺孝治郎, 秋本剛秀, 平田欽也, 八田光弘, 中野清治, 遠藤真弘, 橋本明政, 小柳仁 |
Abstract : |
洞結節, 分界稜, 洞結節動脈を温存する右房大静脈洞切開・吻合法の有用性を同所性心臓移植のイヌ慢性モデルにて確認した. 非フィラリア処理した雑種犬24頭を用いて正中切開・交叉循環下の同所性心臓移植8例を行った. ドナーとレシピエントには体重6~8kgの小犬を, 交叉循環の血液ドナーには19~25kgの成犬を用いた. ドナー心は上・下大静脈, 大動脈(上行~弓部), 肺動脈を剥離し, 無名動脈から挿入したカニューレを用いてYoung液による心停止を得た後摘出し, GIK液によるドナー心の冠灌流を大動脈吻合時まで持続した. 右房は下大静脈から大静脈洞の後面を心房中隔に沿って切開した. レシピエントは胸骨正中切開にて心臓に達し, 両側開胸となるも心膜を胸壁に固定し, 臨床と同様の手術野とした. レシピエントの上行大動脈と上・下大静脈を, それぞれ血液ドナーの頸動脈と頸静脈に回路で接続し, 落差20cm前後で交叉循環を行った. 術中は心電図, 動脈圧, 中心静脈圧をモニターし, 4例目からは交叉循環の血流量を測定した. 移植手術は, レシピエント心を両大血管基部と房室接合部で切除し, ドナー心の左房自由壁, 心房中隔を縫合した後, ドナー心の大静脈洞の後方切開部をレシピエント心の右房自由壁に吻合した. 続いて肺動脈, 大動脈の順に吻合し終了した. 大動脈遮断時間は全例1時間以内で, 術後はすべて洞調律であった. 8例中5例が術後1週~5ヵ月間生存した. |