アブストラクト(39巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性肺血栓塞栓症に対する外科治療成績
Subtitle :
Authors : 中川康次, 増田政久, 椎原秀茂, 鶴田好孝, 阿部弘幸, 三浦正義, 奥井勝二
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 2
Page : 192-199
Year/Month : 1991 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 慢性肺血栓塞栓症の7例に対して施行した肺動脈血栓内膜摘除術の成績を検討した. 手術は肺動脈平均圧>30mmHgを主な適応とし, 人工心肺準備下に開胸法にて行った. 7例中5例は右側のみを, 2例は右側手術3ヵ月後に左側の手術を二期的に施行した. 肺動脈遮断時, 肺動脈圧の著しい上昇を認めたが, 人工心肺を要したものはなかった. 手術死亡はなく, 呼吸不全の遷延化など重大な術後合併症も認めなかった. また術前危惧された肺のreperfusion injuryも問題とはならなかった. 肺動脈収縮期圧は, 術前89.3±11.7mmHgから術後37.1±6.6mmHgへ(p<0.01), 同平均圧は, 50.0±7.2mmHgから24.7±5.4mmHgへ(p<0.01)いずれも有意に低下し, 心拍出量の増加に伴って肺血管抵抗は, 術前11.5±3.1Uから術後4.4±1.3Uに下降した(p<0.01). 一方, 動脈血酸素分圧は術前57.0±6.5mmHgから術後74.3±8.1mmHgへ上昇(p<0.05), 動脈血酸素飽和度も88.7±3.1%から94.7±1.5%へ上昇(p<0.01)したが, これらの改善には約2ヵ月を要した. 術後25.0±14.9ヵ月の現在, 遠隔死もなく術前NYHA II度1例, III度4例, IV度2例が, 術後II度に留まった1例を除き, 全例I度に改善している. 本症はまれな疾患であるが, 内科治療がほとんど無効であるのに対して, 心肺予備能が温存されている間に外科治療を行えば, 極めて良好な成績が期待できる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺血栓塞栓症, 肺性心, 外科治療
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