アブストラクト(39巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌の気管支形成術後の喀痰増加に関して-血行動態と肺血管外水分量からの検討-
Subtitle :
Authors : 小泉潔, 田中茂夫, 富士崎隆, 塩田晶彦, 原口秀司, 真崎義隆, 師田哲郎, 庄司佑, 川本雅司*
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学胸部外科, *日本医科大学第1病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 4
Page : 381-387
Year/Month : 1991 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺癌外科治療において, 術後の喀痰喀出障害は, 特に気管支形成術後に難渋することが多く重篤な肺合併症の原因となる. 誘因として, 迷走神経肺枝並びに気管支動脈切離による影響など詳細な検討がなされているが, 今回, 私共は術後急性期に見られる泡沫状喀痰の増加に関し, 術前及び術後急性期の血行動態と肺血管外水分量(以下EVLW)を測定し, 術後肺血管床減少と右心後負荷増大との関連において臨床所見と対比検討したので報告する. 肺合併症の程度は, 術後気管支鏡下吸痰の回数によって評価した. 7例中3例に喀出困難な白色泡沫状喀痰を見た. 術前EVLWは平均9.91±2.12ml/kgで, 術前・術後慢性期の増加減少率(Δ%)は102±29%であった. また術来の検討から, 定型的肺切除例に比較すると気管支形成術例ではEVLWの術後減少率が小さかった. 更に, 残存肺容積の推定よりみた予測術後EVLWと実測値との相関は, R=0.7354と良い相関を示し, 術後EVLWが予測術後EVLWを上回る症例では喀痰量の増加傾向が見られた. 血行動態の推移を見ると, 気管支形成術例では, 術前・術後増加減少率(Δ%)で肺血管抵抗(PARI)196±165(83~515)%で定型的肺切除例に比し増大傾向が目立ち, 右心後負荷の増大と代償性機転としてのΔ%1回右室仕事係数(RVSWI)196±44%の機能亢進が見られた. しかしながら, 後負荷が継続し代償機転が低下傾向を来すとΔ%1回左室仕事係数(LVSWI)も低下した. 以上から, 術後急性期の心肺循環管理は, 術中の迷走神経, 気管支動脈の温存と共に肺水腫様の泡沫状喀痰増加の予防において重要な管理の一環と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 原発性肺癌, 気管支形成術, 白色泡沫状喀痰, 肺血管外水分量, 血行動態
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