アブストラクト(39巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠動脈バイパス術後の造影検査からみた内胸動脈グラフトの特性に関する定量的研究
Subtitle :
Authors : 関寿夫, 河内寛治, 北村惣一郎
Authors(kana) :
Organization : 奈良県立医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 4
Page : 393-403
Year/Month : 1991 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 成人の冠動脈硬化症及び小児の川崎病心後遺症に対して施行した冠動脈バイパス手術(CABG)例の術後グラフト造影像を解析し, 内胸動脈グラフト(ITA)の特性について定量的に検討した. ITAを左前下行枝(LAD)に使用した成人CABG術後造影症例142例について吻合近位部におけるITAとLADの径比(ITA/LAD比:1.04±0.34)を求め, 手術時年齢, 性別, 術後造影検査時期. ITAの左右別, 太いITA分枝残存, ITAと血流が競合する大伏在静脈グラフト(SVG)の存在, 吻合部以下のLAD狭窄, 術後のLAD狭窄度, 及び高脂血症・糖尿病・高血圧症・喫煙歴の12項目の検討因子が同比にいかなる影響を及ぼすかを多変量解析(数量化I類)を用いて検討した. LAD狭窄度が25%と50%例及びITAと他のグラフト間の血流競合例のITA/LAD比に対する基準化カテゴリー数量はそれぞれ-0.815, -0.359, -0.306であった. すなわち, 本来の冠動脈血流量が良好に保たれているものではITA/LAD比は低値となり, 特に同比はLAD狭窄度と強い相関関係を認めた(偏相関係数:0.627). 他の要因は術後のITA径と無関係であると考えられた. 小児例では術後約1ヵ月目の早期と術後14±4ヵ月の遠隔期にともに開存を示した15例のITA19枝とSVG5枝について各グラフトの長さと径を測定し, ITAの経時的変化をSVGと比較して検討した. 患児の発育と血流需要の増加に伴うITAの長さと径の増加を認めた(p<0.01). 以上より, 血流適応能力と成長能力を示す“生きている”グラフトとしてのITAの生理的特性が明らかになった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠動脈バイパス術, 内胸動脈グラフト, 術後造影検査, グラフト径, グラフト長
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