Abstract : |
1972年5月より1989年2月までに当科において切除した胸部食道癌361例中, 組織学的根治度0, 重複癌, 直死, 他病死, 及び扁平上皮癌以外の症例を除く170例を対象として予後決定因子を解析した. 性別, 年齢, 占居部位, X線型分類, X線長径, 食道軸偏位, 内視鏡型分類, 局在性, 切除度, 主病巣最大径, 分化度, 深達度, 上皮内進展, リンパ管侵襲, 血管侵襲, 壁内転移, リンパ節転移, リンパ節転移の部位, 組織学的進行度, 組織学的根治度の合計20因子について, 対象例を各因子ごとに2年以上の生存例と2年未満の死亡例に分け各因子と予後との関連を生存曲線にて解析した. 予後との関連を認めた因子は初診時年齢, X線型分類, リンパ節転移, 深達度, 組織学的進行度, 並びに組織学的根治度であった. 更に対象例をリンパ節転移の程度によりn(-), n1+2(+), n3+4(+)の3群に分け, それぞれの群について予後に関与する因子について検討したところ, n(-)群については壁内転移の有無で有意差がみられた. n1+2(+)群並びにn3+4(+)群についてはいずれの因子についても有意差がなく, またn1+2(+)群とn3+4(+)群の両群についてもその予後に有意差が見られなかった. 以上よりリンパ節転移陽性例は予後不良であるが, 転移の程度, 転移の部位, 壁内転移の有無な どの因子については差が見られず, 転移の有無そのものが予後決定因子として重要であった. また, リンパ節転移陰性例のうちでも壁内転移を有する例の予後は有意に不良であり, リンパ節転移陽性例と同等に取り扱うべきと考えられる. |