Abstract : |
症例は64歳, 男性. 嚥下時の食道異物感を主訴に当院に入院した. 食道透視で, 胸部中部食道(Im)に長径6cmの鋸歯型の陰影欠損を認めた. 内視鏡所見では門歯列より32cmの部位に隆起型の腫瘤を認め, 同部の生検で扁平上皮癌の術前診断を得た. 手術は右開胸食道亜全摘術, 胸骨下経路の胃管再建術を施行した. 切除標本では辺縁を正常食道粘膜で覆われる5.5×4.0×2.0cmの隆起型腫瘤を認めた. 組織所見として表層部を除く腫瘤の大部分は腺様嚢胞癌であり, 表層部において扁平上皮癌に移行する所見を認めた. Actin, S-100蛋白の免疫組織染色で本腫瘍は食道固有腺由来であることが示唆された. 組織学的進行度はmp, ly(-), v(-), n(-), stageIであり, 手術根治度はCIIIであった. 再発予防照射を施行し, 術後11ヵ月の現在, 生存中である. 腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma:以下ACC)は唾液腺, 気管・気管支, 乳腺などに発生するが, 食道原発のものはまれであり, 本邦では21例が報告されているにすぎない. |