Abstract : |
僧帽弁位異種生体弁のprimary tissue failure(PTF)に対する再弁置換術の手術成績に影響を及ぼす危険因子について検討した. 1982年3月より1990年6月までに, 異種生体弁のPTFに対し再弁置換術を施行した38例を対象とした. 異種生体弁の種類はHancock弁21例, Liotta弁15例, Mitroflow弁2例であった. 術前, 術中の25項目の諸因子を取りあげ, 病院死亡率に関して一変量分分析(X2 testあるいはStudents't test)を行った. 病院死亡は4例(10.5%)であり, 低心拍出量症候群及び多臓器不全でそれぞれ2例ずつが死亡した. 病院死亡率は, 男性, NYHA心機能分類IV度, PTFの病態像として弁狭窄のもの, 及び他臓器不全として, 肝不全, 腎不全, 肺不全の合併例で有意に高率であった. 最近の手術手技の熟達並びに心筋保護法の改善にもかかわらず, 多臓器不全を伴った高度心筋障害例ではその手術成績は不良であった. 従って, 異種生体弁のPTFに対する再弁置換術は, NYHA IV度及び多臓器不全を合併する前に行うべきである. そのためには, 術後一定期間を経過した異種生体弁例には, 心エコー法を含む定期的なfollow-upにより, 早期にPTFを診断することが重要である. |