アブストラクト(39巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性大動脈弁閉鎖不全症の術後遠隔期左室機能-とくに心筋収縮性からみた手術時期に関する研究-
Subtitle :
Authors : 谷口和博, 中埜粛, 松田暉, 酒井敬*, 榊原哲夫, 岸本英文, 平中俊行, 松村龍一, 河本知秀, 榊成彦*, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科, *桜橋渡辺病院心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 6
Page : 867-875
Year/Month : 1991 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Bjork-Shiley弁による大動脈弁置換術を施行した慢性大動脈弁閉鎖不全症29症例(男25, 女4例, 平均年齢43歳)について, その術前及び術後遠隔期(平均26ヵ月)の左室機能とその変動を心臓カテーテル及びシネ左室造影法を用いて検討した. 術前の左室収縮末期容積(ESVI)により症例を3群に分けた. すなわち, ESVI<100ml/m2の12例をI群, ESVI 100~200ml/m2の11例をII群, ESVI≧200ml/m2の6例をIII群とした. その結果, 以下のごとく, 術後左室機能の変動を明らかにすることにより本症の術後遠隔期における左室心筋機能の正常回復を期するための必要な術前左室機能の条件を求めた. 1. 拡張末期容積(EDVI)は術後, I, II, III群でそれぞれ術前値の57%, 40%及び33%となり著明に減少した. この左室容積減少は手術による容量負荷軽減の効果としていずれの症例においても認められた. しかし, III群ではいまだ高値にとどまり左室拡大は残存した. 2. 術前に有意の上昇を示した収縮末期壁応力(ESS)はいずれの群においても術後には低下し正常域へ回復した. 3. ejection phase indexによりみた左室ポンプ機能はいずれの群においても術後に有意の改善を示し, I群及びII群では正常, あるいはほぼ正常域へ改善した. しかし, III群では改善を示すものの正常回復を示さなかった. 4. 収縮末期壁応力-容積比(ESS/ESVI)により評価した左室contractilityは, いずれの群においても術後に有意の上昇を示したが, 正常域への改善をみたのはI群のみであった. II群, III群ではなお低下していた. 以上より, 本症の術後遠隔期において, a. 左室ポンプ機能の回復を期するためには術前のESVIが200ml/m2未満であること. b. 更にポンプ機能のみならずcontractilityの正常回復を期するためにはESVIが100ml/m2未満であることが必要であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁閉鎖不全症, 大動脈弁置換術, 収縮末期容積, 収縮末期壁応力-容積比, 心筋収縮性
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