アブストラクト(39巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部下行大動脈瘤切除術-100症例の手術成績に影響を及ぼす諸因子の検討-
Subtitle :
Authors : 横山秀雄, 数井暉久, 原田英之, 佐々木昭彦, 井上紀雄, 泉山修, 山田修, 山口保, 杉木健司, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 6
Page : 876-884
Year/Month : 1991 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室では, 胸部下行大動脈瘤切除に際し, 部分体外循環の補助下で瘤内人工血管置換術を基本術式とする方針を一貫してとってきた. 本研究では, 早期成績に影響を与える諸因子を多変量解析数量化II類で処理, 分析し, 本手術方法の妥当性と今後の課題を検討した. 対象は, 29~78歳の胸腹部大動脈瘤16例を含む連続する100症例で, 成因は, 非解離性55例, 解離性42例及び仮性3例であり, 緊急手術の施行は17例であった. 早期死は14例, 死亡率は緊急手術29.4%, 待機手術10.8%であるが, 後期の5年間に限ると各々20.0%, 6.7%と成績の向上を認めた. 手術生存95症例の術後合併症として, 腎機能障害は7例(7.4%)で, 発症率の高い胸腹部例を除外した場合, 発症率は3.8%と低く, また, 対麻痺の発症は胸腹部大動脈瘤術後の2例(2.1%)に限られ, 両合併症ともに大動脈遮断時間との明らかな相関は認められなかった. 再開胸を要する出血8例(8.4%)及び呼吸不全6例(6.3%)は, 体外循環が長時間に及んだ症例に集積する傾向を示した. 脳血管障害は2例(2.1%)で, 早期死亡例中にも3例あり, 多変量解析上, 高齢者の動脈硬化性瘤で弓部遮断を要するものが危険因子として判別された. 部分体外循環の補助効果により, 心臓由来の合併症, 腎障害及び対麻痺は低率に抑えられ, 懸念される出血の問題も手術手技の向上で克服されてきた. しかし, 体外循環時間の短縮化, 及び高齢者の動脈硬化性に起因する広汎な動脈瘤に対する成績の向上が今後の課題と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部下行大動脈瘤, 部分体外循環法, 多変量解析数量化II類, 早期合併症, 危険因子
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