Abstract : |
大動脈弓部置換を要する手術では, 脳保護のため何らかの補助手段が必要である. 一般に体外循環併用超低体温下循環停止法, あるいは脳分離体外循環法が用いられているが, 私達は, 2例の大動脈弓部解離症例に対し, 22~23℃の中等度低体温を併用した一側脳分離体外循環下に, open distal anastomosis法を用いて上行弓部大動脈置換を行った. 症例1は62歳男性で限局型, 症例2は60歳女性で広範型の弓部解離であった. いずれも大動脈弁閉鎖不全は認めなかった. 末梢側吻合は, ともに弓部大動脈において舌状にトリミングした人工血管を用いて, 症例1ではinclusion法により, 症例2では端端吻合により行った. いずれも脳合併症の発生はなく, 術後経過は良好であった. 一側脳分離体外循環法については明確にされていない点もあり, 今後詳細な検討が必要と考えられた. 大動脈弓部に, entryを有する解離性大動脈瘤(弓部解離)は, その治療に複数な手術手技と脳保護のため何らかの補助手段を必要とすることから手術成績もいまだ満足すべきものではなく, 外科治療上, 多くの問題点を有している. |