Abstract : |
体外循環(ECC)後24時間の血行動態とrenin-angiotensin-aldosterone(RAA)系の変動及びdopamine(DOP)の影響を, 術前の腎機能が正常で合併症のない冠動脈バイパス単独症例31例を対象とし, DOP投与群(人工心肺終了時に中心静脈圧を15cmH2O以上に保っても, 収縮期血圧が100mmHgを維持できない症例に対してDOP5~10μg/kg/minの点滴を行った16例:D群)と非投与群(15例)に分け, 比較検討した. その結果, 1. ECCによりRAA系は賦活されるが, DOP投与によって血漿renin活性(PRA)及び血漿angiotensin II濃度(AII)は早期に正常値に回復した. その理由は両群間の血行動態に差異が無いことから, DOPの選択的な腎血流増加作用によって腎でのrenin分泌が減少したためと考えられた. 2. 強力な末梢血管収縮作用を持つAIIはD群で有意に低値をとるが, 血圧及び末梢血管抵抗には差が無いことから, ECC後の血圧維持に関してはD群ではAIIの関与は少なく交感神経系のα作用の影響が大きいと考えられた. 3. 血漿aldosterone(Ald)の変動はPRAやAIIと相関はなく, 両群間に差異が無いことから, ECC後のAldの変動はRAA系を含む複数の因子に支配されていることが示され, DOPはAldの変動に影響を与えなかった. 4. 術後管理に際しD群における利尿剤の使用例が少なく, ECC後の尿量維持にDOPは有効であった. 5. ECC後のDOP投与はRAA系の異常亢進を抑制し, 高濃度AIIによる心・腎への悪影響が回避されると考えられた. このように, 開心術後のDOP投与は単なる心機能維持以上に有用で, ECC後に積極的に使用すべきであると結論された. |