Abstract : |
1985年1月より1990年4月までに僧帽弁疾患で僧帽弁置換術を行い, 術後1~8週間にCTを施行し得た42例を対象とし, 術後左房血栓の発生を検討した. 42例中11例(26.2%)に術後血栓を認めた. 発生群の術前左房径は81.4mmと非発生群の57.0mmより拡大していたが, 性別, 年齢, 罹病期間, NYHA分類, 術前心係数, 肺動脈楔入圧, 術中血栓の有無, 左心耳縫縮の有無, 置換したM弁の種類, A弁置換の有無, 三尖弁輪縫縮術施行の有無, 体外循環時間, 気管内挿管期間, ワーファリン投与開始時期, 手術前後の心臓調律には有意差はなかった. 血栓発生の予防目的で, 対象例中の20例に術直後より平均10,000単位/日のヘパリンを投与した. 術後血栓の発生はヘパリン非投与群で22例中9例(40.9%), 投与群で20例中2例(10.0%)であった. 治療法としてウロキナーゼとヘパリンによる線溶療法を6例に試みたが, 縮小3例, 不変3例で, 消失をみた症例は得られなかった. しかし, 遠隔期では通常の抗凝血薬療法中に, 術後2~42ヵ月で11例中8例(72.7%)において塞栓症の症状を見ることなくCT上で血栓が消失した. |