Abstract : |
近年, 心臓手術後及び呼吸器外科手術後の胸壁感染, 胸骨骨髄炎等の治療には, 早期の創部郭清の後に大網や有茎筋肉弁などによる充填が行われるようになっている. しかし, 本邦においては既往に胃の悪性腫瘍を初めとする腹部手術歴を有する症例があることや, 両側内胸動脈(ITA)や胃大網動脈(GEA)使用の冠動脈バイパス術(CABG)の症例も増加しつつあること, 若年者の手術が増加していることにより, 大網や腹直筋弁が使用できない例もある. 今回著者らは, 胃切除術の既往を持つ両側ITA使用のCABG症例, CABGと胆嚢摘出術同時手術症例, 及び心室中隔欠損症術後16年目の難治性胸骨骨髄炎の3例に対して, 大胸筋, 又は広背筋の有茎筋肉弁を用いて形成外科的処置による治療を行った. 今後は, 両側ITAやGEA使用のCABG, 高齢者の手術例, 若年(小児)の手術例が増加すると予想され, 大網や腹直筋使用不能の術後胸骨感染例も少なからずあるものと思われるので, 胸部及び背部の有茎筋肉弁を応用した治療は, 非常に有用であると考えられる. 本論文では, そのような場合の処置, 選択について言及したい. |