Abstract : |
胸腺腫手術39例についてパラフィン包埋ブロックよりFlow cytometryを用い核DNA量を解析し, 臨床病理学的事項や予後との関連性を調べ, 悪性度評価の検討を試みた. DNA aneuploid例は39例中12例30.8%に認め, その頻度はI期15例中1例6.7%, II期7例中2例28.6%, III期9例中4例44%, IV期8例中5例62.5%と臨床病期が進行するほど高率であった. また, I期を限局型, II, III及びIV期を浸潤型としてDNA aneuploid例の頻度をみると限局型では6.7%で, 浸潤型が45.8%で有意に(p<0.05)高率であった. Rosaiらの組織型分類によりDNA aneuploid例をみるとround and oval型では25例中10例がDNA aneuploid例で, spindle型では1例もなかった. 5生率と10生率をみるとDNA diploid 23例は各々94%, DNA aneuploid 12例は75%及び45%で, 術後6年経過の晩期でDNA aneuploid例の予後が有意に(p<0.05)不良であり, 浸潤型20例で検討しても同様の傾向がみられた. 以上より胸腺腫のDNA aneuploid例はDNA diploid例に比べて他臓器に浸潤や播種, 転移を来しやすい特性があり, 予後も不良の傾向があり, 胸腺腫の中でDNA aneuploid例は生物学的により悪性度が高い腫瘍と考えられた. 核DNA量は細胞の生物学的特性を加味した胸腺腫の新しい悪性度評価の因子として有用と思われた. |