Abstract : |
食道癌術後第5病日以降のRespiratory Index(RI)が1.5以上の遷延性酸素化能障害例を呼吸不全群とし, 呼吸不全(-)群と呼吸循環動態, 生体反応系として補体, アナフィラトキシン, 顆粒球エラスターゼなどを比較検討し, 食道癌術後の反応性呼吸不全の病態を明らかにした. 両群間で術前の年齢, 肺機能に差はなく, 挿管日数の平均は呼吸不全生存群5.1日, 呼吸不全(-)群3.7日であった. 呼吸循環動態は呼吸不全群のRIは呼吸不全(-)と比べ術後早期より有意に上昇し, 肺循環静水圧(肺細小血管圧Pmv-血漿膠質浸透圧COP)と肺シャント率Qs/Qtも上昇した. 生体反応系では呼吸不全群の白血球数, 血小板数, 補体CH50, C3, C5は呼吸不全(-)群と比べ術後第1病日より減少遷延した. 一方, 顆粒球エラスターゼとアナフィラトキシンC3aは呼吸不全群で術後第1病日より上昇遷延した. 顆粒球エラスターゼはRIと有意の正の相関があり, 顆粒球エラスターゼは肺組織障害の一因子または組織障害のマーカーであった. 食道癌術後は, 手術侵襲に対する生体系の反応として白血球, 血小板のsequestrationと賦活化があり, 顆粒球エラスターゼを含めた種々のmediatorの相乗作用によるARDS類似の病態の初期段階がある. 特に, 遷延性酸素化能障害例ではその一連の反応系がより進展し肺組織障害が発生していると考えられた. |