Abstract : |
単心室症(SV)26例(左室型5例, 画室型20例, undivided型1例)におけるBlalock-Taussig(BT)手術(手術時年齢6日~14歳, 平均3.2歳)の術中短絡血流量と手術成績並びに遠隔成績の関係を検討した. 同時期にBT手術を行ったファロー四徴症(TF)の19例(平均2.3歳)を対照とした. 術中電磁血流計で測定したSV群の短絡血流量は49±30ml/kg/min(平均±標準偏差)で, TF群51±25ml/kg/minとの間に有意差はなかった. SV群では過大短絡に起因した遠隔死を4例, 房室弁逆流進行を3例に認めた. これら7例の短絡血流量は, 68±40ml/kg/minであり, 心不全を生じなかった経過良好例16例の41±22ml/kg/minより有意(p<0.05)に高値であった. 心室形態・房室弁逆流の有無からみると, 左室型SV 5例では短絡血流量146ml/kg/minの1例にのみ遠隔死を認めた. 一方, 房室弁逆流を伴わない右室型(undivided型含む)SV 10例では遠隔死を1例, 房室弁逆流の発生を2例に認め, これら3例での短絡血流量はすべて50ml/kg/min以上であった. 房室弁逆流を伴う右室型SV 8例では遠隔死を2例, 房室弁逆流の進行を1例に認め, これらでの短絡血流量はそれぞれ57, 34, 28ml/kg/minであった. 以上より, 術後の心不全及び房室弁逆流の発生防止よりみたSVにおける体肺動脈短絡手術の術中短絡量として, 左室型SVでは特に過大な短絡量でない限り問題は少なく, 右室型SVでは房室弁逆流を合併しない場合, 50~60ml/kg/min程度以下が望ましく, 既に房室弁逆流を生じている場合は短絡量が更に少なくても遠隔期心不全を生じやすいことが示された. |