アブストラクト(39巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高度左室肥大を伴う症例に対する心筋保護の病態別比較検討
Subtitle : 原著
Authors : 阿部了, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 10
Page : 1902-1908
Year/Month : 1991 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左室肥大を伴う症例の術中心筋保護の問題点を検討することを目的として, 大動脈弁置換術症例を病態別及び重症度別に分類し比較検討を試みた. 対象は単独大動脈弁置換術を施行した大動脈弁狭窄症23例(P群), 大動脈弁閉鎖不全症21例(V群)の計44例で, P群は更に左室後壁厚が15mm以上の高度肥大を示した11例(P-I群)と15mm以下の中等度肥大にとどまった12例(P-II群)に分けた. また, V群については左室拡張終期係数(LVEDVI)が250ml/m2以上の高度拡大を示した10例(V-I群)と250ml/m2以下の中等度拡大にとどまった11例(V-II群)に分け, それぞれにおいて心筋逸脱酵素及び心機能の両面から比較した. 心筋保護は各群とも持続血液冠灌流法を用い大動脈遮断中の心筋温は5℃前後に維持した. GOT及びCPKの比較でP-I群がV-I群に比べて高い値を示す傾向を認めた. また, 心拍出係数及び左室駆出率改善度の比較ではP-I群 V-I群でいずれも良好な値を示した. 術後カテコールアミン投与量の比較ではP-I群でV-I群より多く, またP-II群との比較でもP-I群で多い傾向がみられた. 今回の検討より, 左室肥大を伴う症例において病態別にみた場合容量負荷による拡張性肥大心に比べて, 圧負荷による求心性肥大心に対する術中心筋保護はより困難で, 特に, 左室後壁厚が15mmを超える高度肥大を示す症例では, 心内膜下層の心筋温モニター, 心筋保護液注入量の調節, 心筋冷即の徹底等より確実な心筋保護法の必要性が明らかとなった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 左室肥大, 求心性肥大, 拡張性肥大, 心筋保護, 持続血液冠灌流法
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