Abstract : |
胸部大動脈瘤手術時の補助手段である一時的バイパス法及び部分体外循環法の臨床面における比較検討を行った. 対象は真性胸部大動脈瘤及びDeBakey III型解離性大動脈瘤症例で, 大動脈遮断時の補助手段として一時的バイパス法を施行した例(TB群;39例)及び部分体外循環法を施行した例(PEC群;39例)計78例である. 両法について術中の心・血行動態, , 臓器保護効果, 合併症などの面から比較検討した. 手術術式・手術関連因子については大きな差はみられなかった. 大動脈遮断時間・出血量・輸血量にも有意差はなかった. バイパス流量についてはTB群1,000±240(ml/min), PEC群1,850±70(ml/min)でPEC群が有意に多かったが, 下肢血圧には有意差はなかった. 術後検査成績では部分体外循環法で血小板数の有意な低下がみられたが, これは吸引回路の使用・フィルターへの吸着など補助手段自体に起因したものと考えられた. 術後腎機能についてはBUN・Crの値は両群間に有意差はみられず, また, 術後腎不全の発症も両群ともに6例ずつであった. 一時的バイパス法を施行中の心機能をみると大動脈遮断によりCO, CIは低下し, 特に遮断直後の低下が最大である. 従って一時的バイパス法を施行する場合は心機能の術前評価が重要であり, また術中の心機能モニターも必須であると思われる. 部分体外循環法は心機能低下例などにも適用可能で応用範囲が広く, また, 術中の病態に対し臨機応変に対応が可能である. 最近では部分体外循環法の症例が増加している一時的バイパス法にも数多くの利点があり, 症例に応じて補助手段の選択を行うべきと考えられる. |