アブストラクト(39巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Fontan型手術後の右心系拍動流の血行動態への影響と肺動脈圧波形の特徴-シミュレイション装置を用いて-
Subtitle : 原著
Authors : 玉木修治1), 川副浩平2), 八木原俊克2), 阿部稔雄1)
Authors(kana) :
Organization : 1)名古屋大学医学部胸部外科, 2)国立循環器病センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 11
Page : 2023-2028
Year/Month : 1991 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Fontan型手術後の右心系モデルを作製し右心房の収縮, 弛緩による拍動が血行動態に及ぼす影響と, 前負荷, 肺血管抵抗などの血行動態諸量の変化が肺動脈圧(PAP)波形の上にどのように表現されるかを検討した. シミュレイション装置はinlet overflow tank(前負荷), 人工弁を装着しない直管型拍動ポンプ, Windkessel model(コンプライアンスとサーボコントロール弁), outlet overflow tank(左房)の各々のチェンバーを直列に連結してFontan型手術後の右心系モデルとした. 基本条件は非拍動下で前負荷12mmHg, 左房圧6mmHg, 冠血管抵抗3.0 Wood unit, コンプライアンスはチェンバー全容積の33.3%を空気で満たし, 拍動させる場合は80bpmとした. 基本条件下で駆動装置のdriving pressure, fraction systole, vacuumを調節することで, 臨床で認められるPAP波形, 肺血流(PF)波形を作成しえた. PAP波形の各名称は便宜上, 心房収縮によるa波, それに続くx谷, 心房拡張時の体静脈からの血液流入によるv波, それに続くy谷とした. 基本条件下で前負荷を8mmHg, 12mmHg, 15mmHg, 17mmHgに固定し, その各々についてpeak PAPがそのときの前負荷より1mmHgづつ高い拍動流とした場合のPFは, 前負荷が8mmHg非拍動時1.10l/mか撮大1.55l/mへ, 12mmHgでは2.00l/mから2.65g/mへ, 15mmHgでは2.65l/mから3.30l/mへ, 17mmHgでは3.15l/mから3.80l/mへと拍動させることにより増加した. 個々の諸量を変化させたときのPAP波形上の変化は基本条件下, 駆動条件一定(peak PAP 20mmHg)の状態で検討した. 前負荷を8mmHgから17mmHgまで連続的に変化させるとPFは1.60l/mから3.70l/mまで増加し, PAP波形ではx谷とy谷の較差が大となった. 左房圧を6mmHgから12mmHgまで連続的に変化させるとPFは2.35l/mから0まで減少し, PAP波形ではx谷とy谷との較差が減少した. 血管抵抗を断続的に減少させるとpeak PAP, 平均圧ともに低下したがPAP波形自体に大きな変化は認めなかった. 空気の量を調節してコンプライアンスを0から66.7%まで断続的に変化させるとPAP波形はコンプライアンスが小さいときにはv波が減高し, 大きいときにはa波が減高した. 以上より, 拍動を増大することで肺血流は増加した. 拍動による肺血流の増加は肺血管抵抗を相対的に減少させたことを意味し, Fontan型手術後に肺動脈が拍動流である利点の1つを解明しえた. また, 個々の諸量の変化は肺動脈圧波形に特徴的に表現され, その形態の変化からある程度, 病態の把握が可能である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Fontan型手術, 右心系モデル, 拍動流, 肺血流量, 肺動脈圧波形
このページの一番上へ