Abstract : |
膜型人工肺を用いた補助循環(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)による白血球数の減少とロイコトリエンB4(LTB4)の変動を検討するために, 雑種成犬27頭に下大静脈近位部脱血, 外頸静脈送血のV-VバイパスによるECMOを施行した. この内の10頭にはLTB4の活性阻害剤であるAA-861を術前投与しAA-861群とし, 非投与のcontrol群と比較検討した. ECMO開始前, 開始後5分, 15分, 30分, 60分, 90分, ECMO解除後30分, 60分に肺動脈血と肺静脈血(大腿動脈血で代用)を採取し, それぞれにおける赤血球・白血球・血小板数及び補体価(CH50)とLTB4について測定した. Control群, AA-861群ともECMO開始直後に白血球数は著減し, またECMO早期では大腿動脈血白血球数は肺動脈血白血球数より有意に減少し生体肺の前後で白血球数に較差が生じた. この生体肺でのleukosequestration(pulumonary leukocyte sequestration)はAA-861群ではcontrol群に比 して抑制されていた. Leukosequestrationを生体肺における白血球の補捉現象と考え両群の補捉率を検討すると, ECMO開始後5分, 15分, 30分ではAA-861群の補捉率はcontrol群に比して有意に低下した. LTB4の変動を両群間で比較すると, ECMO開始後30分まではAA-861群で有意に低値を示した. 以上よりECMO開始後の白血球数の減少は生体肺でのleukosequestrationによって生じると考えられた. 更にECMO開始によって活性化されたLTB4がこの現象に関与していると推定された. |