アブストラクト(39巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環時における臓器障害の機序とウリナスタチンの保護効果
Subtitle : 原著
Authors : 橋本和弘, 堀越茂樹, 宮本尚樹, 鈴木和彦, 奥山浩, 松井道彦, 新井達太, 黒澤博身
Authors(kana) :
Organization : 東京慈恵会医科大学心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 12
Page : 2163-2171
Year/Month : 1991 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺中の顆粒球エラスターゼ, Thromboxane A2, Prostacyclinの変動に加え, 血管内皮細胞より産生されるEndothelinの推移に着目し, これらが術後心肺腎機能に及ぼす影響, エラスターゼ阻害剤(Ulinastatin)の臓器保護効果を検討した. 僧帽弁置換18例を対象とし(コントロール群 n=10, Ulinastatin投与群 n=8), 8時点(A:麻酔導入後, B:心肺開始5分後, C:心肺停止時, D:プロタミン投与時, E:ICU入室時, F:2時間後, G:4時間後, H:12時間後)にて測定を行った. コントロール群において顆粒球エラスターゼ値, Thromboxane B2/Prostaglandin F1a(TxB2/PGF1比), Endothelin値は人工心肺開始と共に, 増加を示した(p<0.05). TxB2/PGF1比は, 心肺終了後速やかに, エラスターゼ値は緩徐に下降を示した. 一方Endothelin値は, ICU入室4時間後まで増加を示した. 細胞内ライソゾーム由来酵素であるβ-glucuronidaseは, 心肺開始と共に有意に増加(p<0.05), 終了時に最高値を示した. 術後, 近位尿細管特異酵素γ-glutamyltranspeptidase(γ-GTP), N-acethyl-β-D-glucosaminidase(NAG)は尿中に有意に増加し(p<0.01), またβ2-microglobulinの再吸収障害も認められ(p<0.01), 近位尿細管障害が認められた. 術後, 肺胞気・動脈血酸素較差(Aa-DO2)は, 有意に増加した(p<0.01). エラスターゼ値はβ-glucuronidase(r=0.78), NAG(r=0.61), γ-GTP(r=0.51), Aa-DO2値(r=0.55)と, Endothelin値は, NAG(r=0.68), γ-GTP(r=0.58)と良い相関を示し, これら障害の原因と考えられた. TxB2/PGF1比は, 相関を示さなかった. 術後の心係数はEndothelinと負の相関(r=-0.69), TxB2/PGF1比とr=0.51の相関を示した. Ulinastatin投与群では, β-glucuronidaseの増加が認められず, またAa-DO2増大と尿細管障害が, 有意に抑えられた(p<0.05). また, Endothelin値の増加もコントロール群より軽度であった(p<0.09).
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工心肺, 臓器障害, エラスターゼ, endothelin, thromboxane A2
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