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75歳, 男性. 上部直腸癌を合併した狭心症症例に対して, 腹会陰式直腸切断術(以下Miles術)とA-C bypass術(以下CABG)を同時に施行し, 良好な結果を得た. 同時手術に際しては, 多大な手術侵襲, 体外循環後の出血傾向, 術野の汚染, 悪性腫瘍の根治度など問題点があるが, 症例を選択した上で施行すれば高齢者に対しても考慮すべき術式であると考える. 虚血性心疾患と悪性腫瘍の合併例に対しては両者に対する手術時期, 手術の優先順位が問題となる. 近年, このような症例に対して一期手術により安定した血行動態下で悪性腫瘍に対する根治術を行い得ることが報告されている1)2). 今回, 著者らは, 高齢者の狭心症, 直腸癌合併例に対する一期手術を経験したので報告する. 「症例」患者：75歳, 男性. 主訴：労作時前胸部痛, 血便. 現病歴：1988年12月, 散歩時に数分間持続する前胸部痛が出現し, 狭心症と診断され薬物療法を受けていたが, その後も中等度の労作で前胸部の不快感が出現していた. また, 1989年12月頃より血便を来し, 直腸癌の疑いで入院した. |
