アブストラクト(40巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : IABPによる拍動流体外循環時の腎血行動態に及ぼす効果に関する臨床的, 実験的研究
Subtitle :
Authors : 諸久永, 江口昭治
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 1
Page : 51-60
Year/Month : 1992 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 術前腎機能低下を伴った, 重症心疾患症例に対して, IABPによる拍動流体外循環を積極的に応用してきたが, 今回, IABPによる拍動流体外循環中の腎血行動態の推移を熱希釈法による腎血流量から検討し, 合せて, IABP自体の腎血行動態に及ぼしうる効果を除神経モデルを用いた実験を行い, その作用機序解明の検討をした. 術中に腎血流量の測定が可能であった後天性心疾患症例18例(拍動流群8例, 定常流群10例)を対象とし, 腎血流量(RBF), 心拍出量(CO), 腎血流量分配率(RBF/CO), 腎血管抵抗(RVR), 灌流圧を測定した. RBF/COは拍動流群が補助回数の増加につれて増加し, 1:1, 2:1補助の場合, 定常流群より有意(p<0.05)に高値であった. 逆にRVRは補助回数の減少とともに高値を示し, 定常流群に比し1:1, 2:1, 4:1補助で有意に低値であった. 灌流圧は, 拍動流群が70~85mmHg内の変動であるのに比べ, 定常流群では59~71mmHgと低値を示す傾向にあった. 次に, 雑種成犬19頭を用いた実験的検討を行った. IABP作動時にRBF/COは増加しRVRは低下したが, 除神経後ではIABPの腎血行動態への影響は消失した. また, ノルアドレナリン(Norad)負荷にて, IABP作動及び除神経の有無にかかわらず, RVRはNorad濃度に依存して増加した. 以上から術中IABPによる拍動流体外循環は, 周術期の腎阻血による障害を予防しうる可能性が示唆されたが, IABP自体の作動がRVRを軽減し, 腎血行動態に有利に作用することから, IABPによる拍動流体外循環時の効果発現には, 神経系を介した機序の関与が大きいものと推測された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 拍動流体外循環, IABP, 除神経, ノルアドレナリン負荷, 局所熱希釈法
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