アブストラクト(40巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Prosthetic valve endocarditisに対する治療成績-特に外科治療上の問題点について-
Subtitle :
Authors : 下野高嗣, 畑中克元, 近藤智昭, 水元亨, 佐藤友昭, 片山芳彦, 岡部学*, 矢田公, 湯浅浩, 草川實
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科, *県西部浜松医療センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 2
Page : 177-183
Year/Month : 1992 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1965年1月より1990年12月までに行った人工弁置換術564例中人工弁感染(PVE)を発症した18例(発生率3.2%)につき検討した. 平均年齢は41.0歳,男女比は2:1で外科治療を15例に, 内科治療を3例に行った.弁置換後60日以内発症の早期例は2例のみで晩期例が多数を占め, 三尖弁位の1例のみ生体弁, 残り17例は機械弁で, 罹患弁は大動脈弁位9例, 僧帽弁位8例, 三尖弁位1例であった. 術前NYHA心機能分類は外科治療群は平均3.8度, 内科治療群は2.3度と外科治療群がより重症であったが, 内科治療は2例(67%), 外科治療は4例(27%)が各々死亡した. 外科治療施行15例中, 14例に活動期手術を施行したが, 感染による死亡はAspergillusによる敗血症1例のみで, 他の3例はいずれも多臓器不全, 又は呼吸不全を起こし死亡した. 弁輪周囲膿瘍は僧帽弁位では3例に, 大動脈弁位では8例全例に認め, 大動脈弁位ではSymbas法や, 弁付グラフトの利用, 右房, 右室, 大動脈壁外より弁輪部への通針による弁固定を行ったがいずれも術後に弁周囲逆流(PVL)の発生を認めた. このため最近の1例では膿瘍郭清後Dacron feltにて補強しつつ左室心筋と僧帽弁輪へ人工弁を固定する弁輪下へのtranslocationを行い良好な結果を得た. 7例で術後PVLに対し再々, 又は多数回手術を必要としたが, 局所の感染再発の所見がなかった6例には死亡例は認めず, PVEの再発例1例のみが死亡した. 再々, 又は多数回手術の2例にも弁輪下へのtranslocationを行い良好な結果を得た. 感染が制御された後の再々手術のriskは低く, PVEに対する治療は再々手術をも覚悟した積極的な早期手術が救命に結び付くと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工弁感染, 感染活動期の手術, 弁周囲逆流, translocation法
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