アブストラクト(40巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠動脈バイパス術の術後遠隔期における心原性死亡の予後に関する検討
Subtitle :
Authors : 平田展章, 中埜粛, 松田暉, 谷口和博, 榊成彦, 新谷英夫, 高橋俊樹, 光野正孝, 植田隆司, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 2
Page : 184-188
Year/Month : 1992 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠動脈バイパス術(CABG)の長期遠隔追跡がなされるに従って, 予後の不良な症例を認めるようになった. そこでいかなる術前因子が術後長期遠隔予後に最も強く影響するのかについて検討した. 教室において1972年より1988年までの17年間に, 単独CABGを施行した連続361例中, 現在の状況を把握し得た360例(追跡率99.7%)を対象とした. 追跡期間は0.4年~14.6年(平均5.7年)である. 手術死亡例は17例(4.7%), 遠隔死亡例は29例(8.0%)うち心原性死亡例は11例であった. actuarial analysisを用い10年生存率を検討した. 全症例のそれは85.2%であった. 一枝病変例, 二枝病変例, 三枝病変例, LMT病変症例ではそれぞれ94.5%, 83.7%, 75.1%, 89.1%であり, 病変枝数間に差を認めなかった. 高血圧, 糖尿病, 高脂血症のいずれかを有する症例(82.6%)といずれも有しない症例(82.8%)間には差を認めなかった. 陳旧性心筋梗塞(OMI)を有する症例では75.4%, 有しない症例では93.3%であり, OMIを有する症例は有意(p<0.005)に予後不良であった. 術前における心係数, 左室拡張末期圧, 左室収縮末期容積指数, 左室拡張末期容積指数, 左室駆出率の5因子について長期遠隔予後に及ぼす影響を多変量解析を用いて検討した. その結果, 左室収縮末期容積指数(LVESVI)のみが有意因子であり, 判別点は50ml/m2であった. 術前LVESVIが50ml/m2以上の症例の10年生存率は32.9%, 50ml/m2未満の症例のそれは88.3%であり, LVESVIが50ml/m2以上の症例は有意(p<0.005)に予後不良であった. 以上よりCABG術後遠隔期における予後は病変枝数, 術前risk factorには関係せず, OMIの合併の有無が関与し, LVESVIが有意の因子として選ばれた. 術後遠隔死亡を避けるための必要条件はLVESVIが50ml/m2であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠動脈バイパス術, 遠隔成績, 心筋梗塞, 左室機能, 左室収縮末期容積
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