Authors : |
鈴木暁, 熊丸裕也, 有泉憲史, 藤邑尚史, 西川邦, 茅野真男*, 三角隆彦**, 大蔵幹彦**, 加藤木利行***, 相馬康宏*** |
Abstract : |
大伏在静脈を用いた冠動脈バイパス術後の静脈グラフトの遠隔期における, いわゆるvein graft diseaseに関し検討した. 対象は1977年5月27日から1989年10月23日までに施行した冠動脈バイパス手術単独例260例から, 術後遠隔期に非選択的に患者を抽出しグラフト造影を行った116例で, これを造影までの期間によりA群:1年未満(平均8.2月)30例, B群:1年以上5年未満(平均19.2月)73例, C群:5年以上(平均96.6月)13例の3群とした. グラフト総数は230本で, A群55本, B群153本, C群22本で開存率はそれぞれ83.6%, 89.5%, 90.9%で各類間で有意差は無かった. 静脈グラフトの壁の性状に関しグラフト造影所見よりカテゴリーI:壁の不整なし, カテゴリーII:壁の不整がグラフト全長の50%未満, カテゴリーIII:壁の不整が全長の50%以上の3つに分類し, 狭窄の程度に関しては, 実測値で径の50%以上を有意狭窄とすると, 開存したグラフト203本では, カテゴリーI 181本(89%), カテゴリーII 22本(11%)でカテゴリーIIIを示すものはなかった. 有意狭窄は5本(2.5%)に認めたが, これらはすべてB群に属していた. 各群ではA群の開存グラフト46本では, カテゴリーI 45本(98%), カテゴリーII 1本(2%), B群137本ではカテゴリーI 120本(88%)カテゴリーII 17本(12%), C群20本ではカテゴリーI 16本(80%), カテゴリーII 4本(20%)で, カテゴリーIIに関しA群とC群間に有意差を認めた(p<0.05). 以上を欧米の報告と比較検討した結果, 本研究においては欧米に比しvein graft diseaseの発生頻度は低く, 進行が緩やかであることが結論づけられた. |