アブストラクト(40巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁閉鎖不全症のRI心プール法による左室最大駆出速度と充満速度の検討と術後心機能評価
Subtitle :
Authors : 夏秋正文, 伊藤翼, 樗木等, 内藤光三, 堺正仁, 堀田圭一, 上野哲哉, 湊直樹
Authors(kana) :
Organization : 佐賀医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 3
Page : 375-381
Year/Month : 1992 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Sellers III度以上の大動脈弁閉鎖不全症を主病変とし, 大動脈弁置換術を行った42例のうち28例について安静時心拍同期心プール法により, 術前後の心機能の比較検討を行った. 術前の心エコー法により左室収縮末期径(LVDs)5cm以上且つ左室内径短縮率(%FS)25%以下の心機能低下群Group I 6例と, その他の心機能の温存された群Group II 22例に大別して検討した. Group II 22例の術前心プール所見ではnormal control例に比較し最大充満速度, 拡張早期最大充満速度など拡張期指標の有意の低下がみられたが, 左室最大駆出速度(PER), 左室駆出率(EF)など収縮期指標の低下は軽度であった. 弁置換後は拡張期最大充満速度及び収縮期最大駆出速度の改善を認めた(PER:術前309±65→術後389±103%EDV/sec, p<0.01). これに対し心機能低下群Group I 6例では, 術前より拡張期指標のみならず, 収縮期指標の低下を合併しており, 術後も充満速度, 駆出速度の有意の改善がみられず, control例より低値を示した(PER:術前154±39→術後190±83%EDV/sec, NS, control例は330±31). 術前の左室のEndsystolic meridional wall stress(ESWS)を算出すると, 心機能低下群Group Iでは心機能温存群Group IIに比べ有意に増大していた. 心筋収縮能の指標となるESWSとEnd-systolic volume index(ESVI)の比ESWS/ESVI ratioは, 心機能低下群では有意に低値を示し収縮能の低下が認められた. 術前の最大駆出速度はESWS/ESVI ratioと有意の正の相関を示し, 心筋収縮能を反映していると考えられた. 術前心エコー上LVDs 5cm以上且つ%FS 25%以下の例では, 最大駆出速度やESWS/ESVI ratioの低下がみられ, 収縮能の低下がはじまっており, 術後心機能の回復も不良であった. 心機能上の手術適応時期を考慮する際, RI心プール法による左室最大駆出速度は, 有用な心機能評価の指標となることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁閉鎖不全症, 心拍同期心プール法, 大動脈弁置換術, 最大駆出速度
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