| Authors ： |
山口保, 数井暉久, 酒井英二, 渡辺敦, 塚本勝, 井上紀雄, 稲岡正己, 山田修, 小松作蔵 |
| Abstract ： |
Marfan症候群におけるannulo-aortic ectasia(AAE)と僧帽弁逆流(MR)との合併例に対する外科治療成績と, その問題点につき検討した. AAEにてBentall術を施行したMarfan症候群23例中, カラー・ドブラ法又は左室造影上MRを呈したのは7例(30%)であり, これを対象とした. 対象の平均年齢は32±10歳, 術前のNYHA心機能分類ではII度1例, III度4例, IV度2例であった. 術前のSellers分類によるMRはI度2例, II度1例, III度1例, IV度3例であった. AAEの最大径は45～80mmで平均63±12mmであり, 大動脈弁逆流(AR)の程度はI度1例, II度2例, III度4例であった. 手術は全例, 冠動脈吻合部の補強を行うBentall準法に加え, III度以上のMRを呈した4例に対し, 機械弁による僧帽弁置換術(MVR)を同時に施行した. 手術死亡はなく, 最長11年5カ月より3カ月(平均2.9年)の観察期間で2例の晩期死を認めた. 晩期死の1例は, II度のMRを放置しBentall術のみを施行した例で, 術後2年3カ月後にMRの増悪による心不全にて失った. 他の1例はIV度のMRを伴う, 術前よりの低左心機能症例で, MVRを同時に施行したが, 術後1年7カ月後に心室性不整脈にて失った. I度のMRを放置した2例では, 遠隔期にもMRの増悪を認めず, MVR施行の生存3例と共に順調に経過している. 以上より, AAEとMRとの合併例では左心機能を重視した早期手術を考慮する必要があると考える. また, III度以上のMRに対しては手術時間等を考慮し, MVRを原則としたが, II度程度のMRで,比較的簡単な手技にて時間をかけずに弁形成が可能な場合は, これも考慮すべきと思われた. |
