Abstract : |
従来三心房心(以下CorT)報告の多くがLucas-Schmidt分類を採用しながら, そのII型は総肺静脈還流異常症(TAPVC)であるとする見解が存在し, 外科的には従来の各分類は心房中隔欠損(ASD)と異常隔壁の位置関係など明確でなく, また近年, TAPVCとの混同及び乳児早期の手術死亡の報告を認め, 手術成績向上のためにも正確な診断が必要である. 本稿ではCor Tを, 左房が異常隔壁により二分され形態的な3心房と肺静脈閉塞症状を呈し, 血行動態上副腔と固有左房間の “直接交通” が存在するものと定義し, また, 非isomerism例は定型的Cor T, isomerism例は非定型的Cor Tと区別し, 最近17年間の自験21例を検討した. その結果, 従来諸分類における欠損と重複が判明したため, 本稿ではASDのないCor TをI型,副腔~右房の高位ASDはIIa, 右房~固有左房の低位ASDはIIb, IIa+IIbはIIc型と区分した. 21例は平均6.4年の術後経過にて全例健常であった. 定型的Cor T 14例は,I型7・IIa4・IIb2・IIc 1例で, IIc型の頻度は低く, 根治術により超体血圧例を含め肺動脈圧はほぼ正常化した. うち5例は超音波診断のみで根治を施行した. 非定型的Cor Tは7例中5例がIIc型であり病像も多様な一方, 全例に共通して左上大静脈遺残(PLSVC)を認め, 発生過程におけるLSVCの関与が示唆された. なお, 術中鑑別を要した4例を示し, 非定型的Cor Tの境界領域に言及した. 非定型的Cor Tには術前診断の不十分な例が存在し, かかる例では術中の検索が重要となる. Cor Tの外科治療においては, まず診断の定義を明確にし, 外科手技上隔壁“切除”が主体のCor Tと, 広い“吻合”が主体のTAPVCを明確に区別し, 各病型ごとに到達法などの基本方針を確立することが重要である. |