アブストラクト(40巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全に対する弁形成術-形成弁機能及び遠隔成績-
Subtitle :
Authors : 松井完治, 深江宏治, 内田孝之, 篠崎啓一, 真弓久則, 河野博之*, 久原学*, 梅末正芳*, 徳永皓一*
Authors(kana) :
Organization : 松山赤十字病院心臓血管外科, *九州大学医学部心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 4
Page : 506-512
Year/Month : 1992 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全の連続21症例のうち, 感染性心内膜炎により高度の弁尖破壊を伴っていた3例を除く18例全例で弁形成術が可能であった. これら18例を対象として形成弁機能及び遠隔成績について検討した. 腱索断裂の病因は特発性14例, 感染性心内膜炎3例, 外傷性1例で, 手術時年齢35~70(52±10)歳, 術前のNYHA分類ではII度9例, III度9例であった. 手術方法は前尖腱索断裂の3例では異種心膜による腱索再建2例, 交連部縫合1例, 後尖腱索断裂の15例ではKay法13例, 弁切除法2例で,全例にKay法弁輪縫縮術を併用した. 病院死亡はなく, 全例において血行動態上著明な改善を認めた(肺動脈収縮期圧:術前43±20mmHg, 術後24±4mmHg, 肺動脈楔入圧:術前17±10mmHg, 術後6±3mmHg. いずれもp<0,001). われわれの方針として強めの弁輪縫縮を行っているため形成弁には3.1±1.2mmHgの平均拡張期圧較差を認めたが, 当院におけるSJM弁の圧較差6.6±3.5mmHgより低値であり, ドーパミン負荷試験においても形成弁機能はSJM弁機能より明らかに優れていた. 全例について2~127(57±48)カ月の経過観察を行い, 遺残雑音を認めた6例中3例で術後1年までに雑音の消失を認め, 経過中雑音再発を認めたのは2例のみであった. 遠隔死亡はなく10年以上経過の4症例を含め全例NYHA I度にて経過している. 経過中, 血栓塞栓症, 感染性心内膜炎などの合併症や再手術は認めず, また, 術後早期に有意な改善を示した心胸比や左室径, 左房径にも遠隔期に増大傾向は認めず, 形成弁の耐久性は良好であった. 以上より本症に対しては積極的に弁形成術を施行すべきと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 腱索断裂, 僧帽弁閉鎖不全, 弁形成術, 遠隔成績
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