Abstract : |
Marlex meshを用いた気管パッチ補填の実験的研究を行った. 実験1(Marlex mesh単独群):頸部気管にMarlex mesh単独でパッチ補填した. 実験2(Marlex mesh+ステント群):Marlex meshにポリアセタール樹脂の半円周状のステントを3本縫着しパッチ補填した. 実験3(大網被覆群):胸部気管にて, ステントを縫着したMarlex meshでパッチ補填し大網にて被覆した. 実験4(腹直筋併用群):有茎腹直筋弁を作成し, 腹直筋鞘前葉と腹直筋を剥離し, 前葉にステントを付けたMarlex meshを縫着した. 前葉が内帯側になるようにパッチ補填した後, 剥離した腹直筋で被覆した. 実験1ではmeshの内腔への落ち込みを高率に認めたが, ステントを縫着した実験2では, meshの落ち込みは1頭も認められなかった. しかし, 肉芽形成とパッチ周囲の膿瘍形成を高率に認めた. 大網被覆を行った実験3では, 肉芽形成は著明に減少し, 膿瘍形成は全くなかったが, 完全上皮化は12頭中3頭のみであった. 腹直筋を併用した実験4では, 肉芽形成や膿瘍形成は少数で, 完全上皮化も12頭中7頭と良好であった. 以上より次の結論を得た. 1. 内腔保持力はMarlex meshにポリアセタール樹脂のステントを縫着することにより満足すべき成績が得られた. 2. 大網被覆, 又は有茎腹直筋弁の併用は感染防御及び肉芽形成阻止に有効であった. 3. 上皮化は有茎腹直筋弁併用群が最も良好であった. Marlex meshと有茎腹直筋弁の併用は一期的手術が可能で, 上皮化も良好であり, 臨床応用も可能と思われるが, パッチの拡大や管状置換へ発展させるためには更に工夫が必要と思われる. |