Abstract : |
大動脈弁閉鎖不全症(AR)において問題となる術前低心機能例において, 術後心機能が回復するか否かについて心エコー法によるStress-Volume関係(ESS-ESVI関係)を中心に検討した. 大動脈弁置換術25例, Bentall手術変法5例の30例を対象とし, 術後の心エコー検査で左室径がほぼ正常に回復した(LVDd<55mm, LVDs<45mm)23例をA群, 手術死亡1例と左室径減少が軽度(LVDd≧55mm, LVDs≧45mm)にとどまった6例の計7例をB群に分類した. (1)ESS-ESVI関係はESVI=0.87ESS-17.7(r=0.92, p<0.001)の相関があり, ESS/ESVIはA群1.62±0.29kdyn/cm2/ml/m2, B群1.18±0.19kdyn/cm2/ml/m2(p<0.001)とB群が低値であった. (2)高度左室拡大例における術前後のΔDdは術前のFSと, ΔDsは術前のESS/ESVIと相関があり, ESS/ESVIは心収縮能の指標として有用であった. (3)DBcAMP負荷試験によるESS-ESVI関係のESVI切片(Vd)からみた左心機能の不可逆性はVd>100ml/m2であった. 生存例では負荷前後と術前後のESS-ESVI関係の傾きはほぼ等しく, 術後に心機能は改善することが示唆された. ESS/ESVIとCSAの負の相関, 死亡例のESVI>180ml/m2, ESS/ESVI<1.2kdyn/cm2/ml/m2, R/Th高値から, ARでは左室拡大に伴う左室肥大とともに心機能は低下し, 左室拡大がある限度以上になると左室の適合性肥大がえられず不可逆性心筋障害にいたることが示された. |