Abstract : |
近位側に完全閉塞のある冠動脈に対する冠血行再建術の手術適応及び手術の効果に関してはいまだ議論のあるところである. 今回われわれは左冠動脈前下行枝(LAD)閉塞症例に冠動脈バイパス術(CABG)を行い, 術前後の左室局所壁運動, 運動負荷タリウム心筋シンチ所見及び運動耐応能を比較検討した. 1987年4月から1991年3月における当院のLAD閉塞例は21例, 平均60歳であった. 全例に狭心症がみられ, うち15例にLAD領域の心筋梗塞の既往があった. LAD閉塞部末梢の吻合可能率は90%(19/21)であった. 手術死亡はなかった. 術後1~2カ月後のグラフト開存率は大伏在静脈は64%(7/11), 左内胸動脈は100%(8/8)であった(p<0.05). 術前及び術後1~2カ月の左室造影では, seg 2, 3, 6の63%に術前何らかの局所壁運動障害があるが, CABGが成功した場合その率は31%に減少した. 術前及び術後1~2カ月後の運動負荷タリウム心筋シンチ所見では, 左室前壁, 心尖部及び心室中隔の62%に術前何らかの灌流障害があるが, グラフト開存例では灌流障害が42%に減少した. CABG不可能例, 又はグラフト閉塞例は壁運動及びシンチ所見共に改善しなかった. グラフト開存例において, 術前後のトレッドミルテストによる最大運動負荷は3.8±0.7Metsから6.5±0.7Metsに有意(p<0.05)に改善した. 結論:(1)閉塞冠動脈であってもCABGによって灌流領域の心機能の回復が期待できる. (2)グラフトとしては大伏在静脈よりも左内胸動脈の開存性が優れている. |