Abstract : |
症例は44歳の男性で3年前に交通外傷の既往がある. 右心室前壁に存在する腫瘤が右室流出路をほぼ完全閉塞し, 急激な右心不全が進行し急性腎不全, MOF, DICを併発していた. 術前心エコーにて右心室腫瘍の診断下, 救命目的に緊急手術を行った. 術中所見では, 腫瘤は右心室のほぼ2/3を占め, 室上陵の部分では腫瘤内から血液の噴出を認めた. 腫瘤の心室中隔穿孔と術中診断した. 腫瘤の全摘出は不可能と判断し, 流出路パッチ拡大術及び穿孔部パッチ閉鎖術による血行再建のみ施行した. 術後CVPは術前30cm H2Oから8cm H2Oへと劇的に改善し, 一応血行動態は安定化したが, 患者は術後22日目に肝不全のために死亡した. 病理解剖にて腫瘤内は古い血栓で, 上行大動脈より発生した仮性動脈瘤内のものであった. また, 動脈瘤は右心室前壁を圧迫し一部は右室内膜側まで達し右室内に破裂(blow out)していた. 上行大動脈内には径約2cm大のpunch out様の内膜欠損部を認めこれが動脈瘤の入口部となっていた. 交通外傷による仮性動脈瘤の極めてまれな形態と思われたので報告する. |