アブストラクト(40巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 片肺換気下食道切除における循環・呼吸動態の実験的, 臨床的検討
Subtitle :
Authors : 立花光夫, 中村輝久
Authors(kana) :
Organization : 島根医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 6
Page : 873-884
Year/Month : 1992 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌切除時の片肺換気法の循環・呼吸動態に及ぼす影響を実験的, 臨床的に検討した. 実験1~3ではイヌ30頭を用い, 片肺換気下食道切除と食道切除+迷走神経切離(迷切)における術後3日目までの循環・呼吸諸量と3日目の肺血管外水分量(EVLW)を測定した. 実験4ではイヌ10頭を用い, 片肺換気下迷切のEVLWへの影響を検討した. 臨床では, 胸部食道癌30例を片肺換気群と両肺換気群に分け検討した. イヌの実験では, 片肺換気下単開胸, 食道切除, 食道切除+右迷切いずれの場合も肺内シャント率(Qs/Qt)の推移は同じ傾向を示した. すなわち, 片肺換気30分後48±7%に上昇したが, 片肺換気終了直後には12±9%に回復した. PaO2も, 片肺換気30分後では105±55mmHgに低下したが, 終了直後には回復した. これら片肺換気中のQs/Qtの上昇, PaO2の低下は, 両肺換気の場合より大きかったが(p<0.05), 終了後は差はなかった. その他の循環・呼吸諸量やEVLWは差はなかった. また, 換気条件に関係なく, EVLWの左右比(rt/lt)は食道切除+迷切においてのみ上昇し(p<0.05), これは右迷切, 左迷切でも同様であった. 臨床的検討では, 片肺換気中のQs/Qtは35±14%と両肺換気の23±9%より高かったが, 終了直後に回復, その後は差はなかった. その他の諸量や肺合併症にも差はなかった. 以上, 食道切除時の片肺換気法は, 安全に施行できると思われた. また, 食道切除時の迷走神経損傷は, 開胸側のEVLWを増加させ肺合併症の準備状態となり得ると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 片肺換気, 食道切除, 迷走神経切離(迷切), 食道癌術後肺合併症, 肺血管外水分量
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