アブストラクト(40巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 家兎による三尖弁閉鎖不全モデル作成及び遠隔期における消化吸収能の検討
Subtitle :
Authors : 山田拓, 広瀬一, 梅田正五, 村川真司, 森義雄, 橋本昌紀
Authors(kana) :
Organization : 岐阜大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 6
Page : 896-900
Year/Month : 1992 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 重症うっ血性心不全の末期に生じる心臓悪液質の病態の1つに, 体静脈圧の上昇に伴ううっ血肝が, 更に腸管循環障害がある. このため腸管の吸収障害が発生して, 栄養障害を助長するとされているものの, これを実験的に示した報告はない. そこでこの病態を実験的に確認するために, 対象動物として比較的, 体重が均一で寿命の短い家兎を用いて, 慢性三尖弁閉鎖不全家兎作成の手技の確立と, そのモデルにおける遠隔期の消化吸収障害の有無を検討することを目的とした, 白色家兎(2.5kg, n=4)に対し, 右第4肋間開胸後, 左右肺静脈, 左右前大静脈, 後大静脈ヘテープをかけ, これを絞ることにより得られる単純循環遮断(1~2分)下に右房切開し, 直視下に経右房室弁(ヒトの三尖弁に相当し以下三尖弁と記す)的に三尖弁腱索の切断を行った. 腱索切断前, 切断後約30分, 及び実験より2から4カ月後の遠隔期に, 心拍数, 大動脈圧, 右房圧を測定した. 右房圧の最高値の平均値は, 三尖弁閉鎖不全(TR)作成前は6.5mmHg, TR作成直後は16.1mmHg, 遠隔期は17.0mmHgであった. TR作成直後はTR作成年よりすべて高値であり, 遠隔期もTR作成前よりすべて高値であった. また, TR作成直後及び遠隔期においては, いずれもv波(右房圧波形の最高圧)の最高値であった. 一方, TR作成後2から4カ月後の遠隔期にD-xylose負荷試験を行った. D-xylose尿中排泄量は, TR家兎0.55±0.05gが, 正常家兎0.89±0.25gと比較し有意(p<0.05)に低下していた. 以上より, 家兎における慢性TRのモデル作成が手技的に可能であることを示した. 更にこのモデルにおいて, TR及びそれに基づく長期にわたる体静脈圧の有意な上昇は, 消化吸収障害の原因となり得ることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心臓悪液質, 三尖弁閉鎖不全, 消化吸収試験, 家兎, 実験モデル
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