Abstract : |
遠心ポンプ(Sarns)と外部灌流型膜型人工肺を用いて拍動流体外循環を行い, 血球成分への影響と, 拍動流により得られる血行動態及び内分泌系への影響について定常流体外循環と比較検討した. 遠心ポンプを用いた拍動流灌流は(P群), 同じ回路で定常流灌流とした場合(NP群)に比べて, 溶血が著明で, 血小板の減少の程度も大きいが, 口径の大きな送血管に替えることにより(Pc群)溶血は有意に減少した(p<0.05). Pc群のΔfree Hb(10~70min)値15.0±3.7mg/dl/hrは, NP群や, 同様の回路でローラーポンプを用いて拍動流灌流としたPr群の値と比較して有意差はなく, 血小板数についても,Pc群では, NP群と同様の推移を示した. 以上により, 遠心ポンプを用いた拍動流灌流は, 太いカニューレを使用する限り血球破壊の面での臨床上の支障はないと思われる. P群ではNP群に比べて, 体外循環中のアンギオテンシンIIの上昇が抑制され(p<0.05), 血漿レニン活性・アンギオテンシンI・アドレナリン・ノルアドレナリンの上昇の程度が小さくなる傾向にあった. これは, 有効な拍動流を遠心ポンプが生み出している証と考えられるが, 体血管抵抗が低下するには至っていない. 甲状腺ホルモンについては, P群, Pc群, NP群のいずれにおいても体外循環中は低値をとっており, 拍動流の有無が甲状腺ホルモンの末梢組織での代謝に影響することはないと考える. 但し, TSHに関しては, Pc群はNP群と比較して有意に高値を示しており, 拍動流体外循環が視床下部-下垂体機能を正常に保ちえたことにより, 何らかの刺激に反応してTSHが分泌されたものと考える. |