アブストラクト(40巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環中のケトン体分画, 乳酸, ピルビン酸濃度の変化とその臨床的意義
Subtitle :
Authors : 半田宣弘, 許俊鋭, 新井葉子*, 菰田二一*, 横手祐二, 坂岸良克*, 尾本良三
Authors(kana) :
Organization : 埼玉医科大学第1外科, *埼玉医科大学生化学
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 7
Page : 1039-1045
Year/Month : 1992 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環(CPB)中の全身の代謝状態を評価する目的で, 20例の開心術症例(I群)に対し, 体外循環前・中・後の6時点で乳酸(L), ピルビン酸(P), ケトン体(アセト酢酸(ACA), β-ヒドロキシ酪酸(HOB))の濃度を測定し, 総ケトン体量(TKB=ACA+HOB)を算出した. また, ピルビン酸・乳酸比(P/L), ケトン体比(KBR=ACA/HOB)も算出し比較検討した. 更に待期的冠動脈再建手術(CABG)症例22例(II群)ではケトン体のみ測定し, 術後臓器障害(OF)を示した5例(II-A群)と順調に経過した17例(II-B群)と比較検討した. I群では, P及びLは体外循環開始から終了まで経時的に有意に増加し, 体外循環終了後減少したが体外循環離脱後1時間でも術前値より高い値を示した(p<0.001). HOB及びTKBは大動脈遮断15分後には有意に増加し(p<0.001)ピーク値をとった. それ以後は漸減傾向を示した. KBR及びP/L値の検討では, 体外循環前KBR=1.53±1.57, P/L=0.085±0.010から大動脈遮断15分後にKBR=0.34±0.21(p<0.01), P/L=0.025±0.005(p<0.001)と有意に低下したが, 以後経時的に上昇し体外循環離脱1時間後にはKBR=1.28±1.33, P/L=0.065±0.013となった. KBRは体外循環前値近くまで回復したが, P/Lは体外循環前値に比較しなお低値を示した(p<0.001). CABG症例においてII-A群はII-B群に対して, 大動脈遮断解除直前におけるKBR値は有意に低値であった. 体外循環中の末梢の循環不全に伴いケトン体, 乳酸の蓄積とKBR, P/Lの低下が認められたが, ケトン体の変化はピルビン酸・乳酸より鋭敏であった. 以上よりケトン体は体外循環中の末梢循環不全の評価においてピルビン酸・乳酸より鋭敏な指標である可能性が示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ケトン体分画, 体外循環, クエン酸回路, ピルビン酸乳酸比, 嫌気性代謝
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