アブストラクト(40巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 左房粘液腫の臨床的検討―特に腫瘍形状による特徴について―
Subtitle :
Authors : 下野高嗣, 駒田拓也, 草川均, 新保秀人, 矢田公, 湯浅浩, 草川實, 竹内義広*, 山崎順彦*, 滝川喜一*
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科, *厚生連松阪中央総合病院胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 7
Page : 1060-1066
Year/Month : 1992 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 当教室で経験した左房粘液腫11例につき臨床症状, 腫瘍摘出法, 選択的冠動脈造影所見を検討した. また腫瘍の性状によりゼラチン様で分葉しもろい分葉型腫瘍(7例64%)と, 表面平滑で卵型で壊れにくい卵型腫瘍(4例36%)に分類して両者の特徴を比較した. 臨床症状は, 労作時呼吸困難を主訴とし診断されたもの5例(45%), 神経症状を主訴とし診断されたもの6例(55%)であった. 頭部CT所見にて4例で脳梗塞を認め, 4例とも分葉型腫瘍であった. 手術は両心房を切開し, 腫瘍茎付着部の心房中隔全層を含め腫瘍を摘出することを原則としたが, 術中所見にて腫瘍茎が硬く細い4例では付着部心房中隔, 自由壁の内膜筋層切除にとどめた. また, 広基性分葉型腫瘍2例では組織所見にて付着部での中隔組織への腫瘍浸潤を認めた. 最長12年(平均5年4ヵ月)の経過観察で全例再発は認めなかった. 選択的冠動脈造影は7例で冠動脈病変の合併を除外するため行った. 冠動脈の有意狭窄は認めなかったが, 腫瘍の栄養血管は5例(71%)で同定可能で, うち新生血管の増生による腫瘍実質の著明な造影を認めた2例はいずれも卵型腫瘍であった. また, 造影剤の貯留像は3例に認め, いずれも腫瘍内の出血巣と一致した. 以上より分葉型腫瘍と卵型腫瘍を比較すると, 分葉型腫瘍は腫瘍塞栓症を発症する危険性が高く, 広基性のものは腫瘍付着部の内膜下浸潤につき注意が必要で, 冠動脈造影では栄養血管が同定できても腫瘍の著明な実質造影はほとんど認めないのに対し, 卵型は腫瘍塞栓の危険は少なく, 冠動脈造影では腫瘍実質が著明に造影される症例を認めた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 左房粘液腫, 選択的冠動脈造影, 腫瘍の分類, 手術方法
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