アブストラクト(40巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠動脈バイパス術症例における上行大動脈硬化の評価と手術対策
Subtitle :
Authors : 齊藤力*, 寺田康, 須磨久善, 高山鉄郎, 福田幸人, 鰐渕康彦, 古田昭一
Authors(kana) :
Organization : 三井記念病院循環器センター外科, *自治医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 8
Page : 1189-1194
Year/Month : 1992 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1989年4月から1991年3月までの2年間に冠動脈バイパス術前に胸部X線CT検査を施行した136例(年齢30~80歳, 平均60歳, 男110例, 女26例)を対象として大動脈石灰化の程度について評価した. CT所見上, 上行大動脈では20例(14.7%)に石灰化が存在した. 60歳未満(65例)及び60歳以上(71例)での石灰化の頻度を比較すると, いずれの部位においても60歳以上の症例群に高率に石灰化が認められた(p<0.01). 術中触診所見で上行大動脈硬化を認めたものは25例(18.3%)で, 術前胸部X線CT検査による上行大動脈病変の診断率は術中診断との比較ではsensitivity72.0%, specificity98.2%, positive predictive value90.0%であり, sensitivityはやや劣るものの術中触診所見と良く一致し, 冠動脈バイパス術において手術対策をたてる際に有用であると評価できた. 次に対象症例中の手術対策として大動脈に遮断鉗子をかけずに手術を施行した非遮断群(6例), 侵襲を1回のみの上行大動脈遮断で手術を施行した1回遮断群(19例)とに分類し, 通常の手技で手術を施行した対象群(111例)を含め周術期における神経学的合併症の発生について検討を加えた. 神経学的合併症は非遮断群には発生はなく, 1回遮断群に2例(10.5%), 対象群に2例(1.8%)の発生をみた. 以上より胸部X線CT検査所見上上行大動脈に石灰化病変を認めた際には, 大動脈粥状硬化の存在を考慮し, 手術対策としてin situ arterial graftを用いた心室細動下吻合法などの上行大動脈に侵襲を加えない方法を施行すべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠動脈バイパス術, 上行大動脈石灰化, 神経学的合併症, 胸部X線CT検査
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