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過去10年間に当教室で経験した原発性肺癌手術症例のうち, 心疾患及び甲状腺疾患を除き, 調査可能な238例に対し, 術後急性期の不整脈についての検討を行った. 238例中43例（18.1％）に術後一過性の不整脈の発生をみた. 不整脈は心房細動39例, 上室性頻拍4例であり, 心房細動が90.7％を占めた. 不整脈の発生頻度は, 年齢別では, 男女とも50歳台, 60歳台に高く, 男性の50, 60, 70歳台の頻度は, それぞれ15.9, 22.2, 32.1％であり, 高齢となるほど高かった. 性別では, 男性188例中39例（20.7％）, 女性50例中4例（8.0％）と有意に男性に多かった（p＜0.05）. 不整脈の発生は, 術後平均5.2±3.8日, 持続期間は平均1.3±0.9日であった. 男性群における手術術式別の発生頻度は, 肺全摘術後27.6％, 肺葉切除術後19.6％, 縮小手術後16.7％となっており, 肺の切除範囲が大きいほど発生頻度は高かった. また, 男性群において不整脈発生群（A群）と不整脈非発生群（B群）に分類し, 術前の呼吸機能を比較したところ, 1秒率において, A群68.7±10.9％, B群76.7±9.5％と, 有意にA群で低下を認めた（p＜0.05）. そこで不整脈の予防を目的として, 肺癌手術後の男性にジギタリス剤の投与を行ったところ, ジギタリス剤投与群（C群）での不整脈の発生頻度は61例中5例（8.2％）と有意に少なかった. |
