アブストラクト(40巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : A型大動脈解離の急性期治療方針―解離腔血栓閉塞例の治療成績からの検討―
Subtitle :
Authors : 佐々木建志, 田中茂夫, 池下正敏, 杉本忠彦, 井村肇, 庄司佑, 高野照夫*, 田中啓司*, 隈崎達夫**, 大矢徹**
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学胸部外科, *日本医科大学第1内科(集中治療室), **日本医科大学放射線科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 9
Page : 1668-1674
Year/Month : 1992 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : われわれは, 1981年から1990年の期間に48例のA型急性大動脈解離を経験した. このうち生前診断されることなく死亡した3例を除く45例の治療成績から, われわれの治療方針の妥当性を検討するとともに, 解離腔血栓閉塞例(T型)と開存例(P型)の治療成績の比較検討を行い, 急性期における解離腔の血栓形成の有無が, その予後に与える影響について検討した. 前期(1981~1986)の25例では, 本症の診断がつき次第, 合併症の有無や病型, 病態にかかわらず直ちに手術を行う方針とした. 早期死亡は手術症例20例中9例, 非手術症例5例中4例で, 結局25例中13例(52.0%)が死亡した. 後期(1987~1990)の20例では, 合併症のないT型に対しては保存的治療を優先すると共に, よりintimal tearの切除を重視した術式を選択する方針とした. その結果, 早期死亡はP型の手術症例4例(20.0%)のみとなり, 治療成績は向上した(p<0.05). Intimal tearを切除し得た症例の手術成績(30.0%)は, 放置例(53.8%)よりも良い傾向にあり, T型(切除例:25.0%, 放置例:71.4%)では特にその傾向が明らかであった. 早期死亡を除いた手術生存例の遠隔成績は, P型に比しT型で良い傾向にあり(5年生存率, T型:80.0%, P型:47.6%), また, 遠隔期における残存解離腔の改善率もT型で有意に良好であった(T型:80.0%, P型:18.2%, p<0.05). A型大動脈解離の急性期治療に当たっては, 早期診断と共に病型・病態の把握が重要で, 特に解離腔の血栓形成の有無(すなわちT型かP型か)は治療方針や手術術式決定の重要な指標と考えられる. そして, 合併症のないT型を除いては, 基本的に早期手術を行うべきで, よりintimal tearの処理を重視した術式を選択すべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 急性大動脈解離, 解離腔血栓閉塞型, StanfordA型, intimal tear
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