Authors : |
桜田徹, 栗林良正, 相田弘秋, 関啓二, 後藤由和, 柴田芳樹, 目黒昌, 林龍司, 山岸逸郎, 阿部忠昭 |
Abstract : |
術前貯血法, 血球濃縮装置による術中出血回収法を導入し無輸血開心術を目標としているが, 目標の達成は十分とは言い難い. そこで, 貯血法と回収法を用いた成人開心術29例(同種血無輸血13例, 輸血16例)を対象に, 無輸血成否の決定因子につき, 数量化分析法を用いてretrospectiveに検討を加えると共に, 開心術へのMSBOS(Maximum surgical blood order schedule)の適用の可能性について検討した. 数量化分析II類から, 無輸血へ寄与する因子の順位, 並びにその条件は, (1)貯血前Ht値(その値40%以上), (2)術中出血量(その量600ml以下), (3)術前貯血量(その量800ml以上), (4)体重(その値70kg以下), (5)体外循環開始時の計算上Ht値(その値24%以上), (6)体外循環時間(その値120分以内), (7)術後12時間の出血量(その量600ml以下)であり, サンプルのグループ別分布では無輸血群と輸血群は比較的明確に分けられた(判別結果のaccuracyは93.1%). また, 数量化分析I類で外的基準を術前出血量とすると, 術前因子(既知因子と予想可能な因子), すなわち体重, 術前貯血量, 体外循環開始時の計算上Ht値, 体外循環時間の4つの術前因子のカテゴリー・スコアから準備すべき血液量(予測輸血量)を正確に算出し得た(重相関係数0.89962). 術前貯血法, 術中出血回収法を併用した成人開心術での無輸血手術達成の鍵は貯血量の増量化, 出血量の軽減であり, 術前因子から各開心術での準備すべき血液量を算出することができ, 開心術へのMSBOSの適用の可能性が示唆された. |