アブストラクト(40巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性腎不全患者の開心術における術中術後腎機能の推移及びその管理-術中透析は必要か?-
Subtitle :
Authors : 真弓久則, 内田孝之, 深江宏治*, 梅末正芳*, 河野博之*, 篠崎啓一, 松井完治
Authors(kana) :
Organization : 松山赤十字病院心臓血管外科, *九州大学医学部心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 10
Page : 1839-1846
Year/Month : 1992 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 当院での成人開心術300例中, 術前に慢性腎不全(CRF;クレアチニンクリアランスCcr<40ml/min, 血清クレアチニン値Scr>1.6mg/dl)と診断した16例(虚血性心臓病8例, 弁膜症7例, 先天性心臓病1例)につき, 術前の腎機能別に術中術後の腎機能の推移及び管理方法を検討した. 術前のCcr値(ml/min)より, I群(6例)30<Ccr<40, II群(5例)20<Ccr<30, III群(5例, 内4例は透析中)Ccr<10に分類し, 対照としてCcr>50の38例をC群とした. 各群とも人工心肺回路には限外濾過装置のみを用い血液透析回路は使用しなかった. Ccr(ml/min)の推移をみるとI群はC群と同様の経過パターンを示し, 術当日の最低値24.2±12.0から術後1日目には術前値へ復した. II群は術後1日目に最低値13.0±6.0を示し, 術前値への回復は術後5日目であった. III群では全経過を通して低値(<5)であった. Scr(mg/dl)の最高値はC群1.3±0.3(術当日), I群2.4±0.7(術後1日目), II群3.6±0.5(術後3日目)であった. なお, Scr, BUN, 血清K値はIII群を含むCRF各群で体外循環中は有意に低下し術当日中に術前値を越えることはなかった. CRF各群では血清K値の上昇と水分過多を透析開始の指標としたが, I及びII群では利尿剤等の薬物療法のみで対処可能であった. III群では1例を除き, 術当日~術後3日目に腹膜透析を開始した. CRF各群の16例中, 病院死亡, 縦隔洞炎を含む創感染及び多臓器不全の発生はなかった. 以上より次の結論を得た. 術前腎機能低下が高度な程, 術後腎障害は遷延するが, 術前Ccrが20ml/min以上であれば術後透析は不要である. 術前透析中の患者でも体外循環中の血液透析は必ずしも必要ではなく, 限外濾過装置のみで安全に開心術を施行できる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 限外濾過法, 血液透析, 腹膜透析, クレアチニンクリアランス, 体外循環
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