アブストラクト(40巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環の血液凝固線溶系に与える影響-凝血学的分子マーカによる臨床的研究-
Subtitle :
Authors : 中島博, 沖永功太
Authors(kana) :
Organization : 帝京大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 11
Page : 1987-1997
Year/Month : 1992 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環(CPB)が, 血液凝固線溶系に与える影響を凝血学的分子マーカの測定により検討した. 対象はA-Cバイパス術12例, 大動脈弁置換術1例, 2弁置換術2例, ASDパッチ閉鎖術1例を施行した, 計16例(男性12例, 女性4例, 平均年齢55歳)である. 測定は, 血小板数, hematocrit, antithrombin III(AIII), β-thrombogloblin, platelet factor 4, fibrinopeptide A, thrombin antithrombin III complex, FDP, D dimer FDP, plasmin-α2 plasmin inhibitor complex, tissue plasminogen activator(t-PA), thrombomodulin(TM)を, それぞれ術前より術後2週まで経時的に測定した. AT IIIはCPB開始と共に術前値の50%に低下した. 血小板系マーカはCPB開始と同時に増加し, CPB後24時間までその高活性が持続した. 凝固系マーカは大動脈遮断解除後に増加し, プロタミン中和後に最高値となり, その後3時間高値を持続した. CPB中の線溶活性は血管壁の刺激に対するt-PA放出に続くfibrinogenolysisが主体であったが, 大動脈遮断解除後の凝固充進と共にfibrinolysisに変化した. TMは大動脈遮断解除後から増加し, プロタミン中和後6時間に術前値の2倍となった. この結果, 以下の結論を得た. 1. プロタミン中和後3時間は, 高度凝固亢進と血小板活性化が持続した. 凝固亢進の原因としてプロタミン中和時の低AT III血症が考えられる. 2. 大動脈遮断解除後より始まる凝固亢進状態はTMの増加時期と一致し, 肺の再灌流との関係が推測される. 3. TMの有意な増加はCPBによる広範な血管内皮の障害を示唆する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 凝固線溶系, トロンボモジュリン, 周術期心筋梗塞
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