アブストラクト(40巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 遠心ポンプを用いた胸部下行大動脈手術-大量出血時の対策としてのマルチパーパス回路の臨床使用経験-
Subtitle :
Authors : 茂泉善政, 阿部康之, 伊藤智宏, 清水雅行, 近藤俊一, 赤坂純逸, 鈴木一郎*
Authors(kana) :
Organization : 仙台市医療センター心臓血管外科, *仙台市医療センター臨床工学室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 11
Page : 2005-2010
Year/Month : 1992 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部下行大動脈手術に対する補助手段として遠心ポンプによる一時的バイパス法が用いられているが, この際脱血側にソフトリザーバーを組み込んだマルチパーパス回路を使用している. 本回路を使用し人工血管置換術を施行した胸部下行動脈瘤8例を対象とし, バイパス中の血行動態の変化及び術後合併症等より本回路の有用性及び脱血部位の選択につき検討した. 対象の年齢は平均65歳(55~74歳)で真性動脈瘤3例, 慢性III型解離5例で, 大動脈脱血ないし左房脱血による一時バイパス法を各々4例に用いた. バイパス時間は172±54分で, この間の出血は7,065±3.480ml, 他血輸血は2,190±982mlであった. バイパス中上肢収期圧は130~150mmHgで,下肢平均圧も70~110mmHg安定しており, 更に灌流量も2L/min以上に維持された. 脱血部位について血行動態を比較すると, 上肢拡張期圧は大動脈脱血例では40~50mmHgであり左房心血例の70~90mmHgに比し有意に低下した(p<0.01). また, 大動脈脱血の1例で脱血部の仮性瘤形成がみられた. 直腸温はバイパス前35.5±0.8℃であったが120分後には33.5±0.4℃と経時的に低下した. 術後肝腎障害例や出血による再開胸壁はなかった. 以上より本回路は大量出血時にも迅速に循環血液量の補充ができ, 安定した下半身の灌流圧と灌流量が得られ有用と思われた. 大動脈脱血は上肢拡張期圧の低下と挿に伴う合併症が危倶されるため, 左房脱血を第一選択とすべきである. また, 長時間のバイパスに際しては保温に対する配慮が必要と思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 下行大動脈手術, 補助手段, 遠心ポンプ, マルチパーパス回路, 左房脱血
このページの一番上へ