Abstract : |
1987年以降, 術前の自家血貯血と, 体外循環中の限外濾過装置の併用により無輸血開心術を80例に行った. このうち, 同時期に行った同種血使用開心術50例(II群)と疾患構成が類似した50例(I群)を選び, また同時期に行った開心術のうち, 術後に同種血を要した12例(III群)との3群間で末梢血, 肝機能, 腎機能について比較検討し, 併せて無輸血開心術の適応条件に付いて検討した. ヘマトクリット値はII群はI群に比して術後3日目までは有意に高値, III群は術直後, 1日目に低値であったが7日目以降では差がなかった. 血小板数はII群は術後1日目, 7日目に, III群は術後1日目に有意に低値であった. Lactate dehydrogenase, 総ビリルビン, 直接ビリルビンは, II群がI群に比して有意に高値であり, II群の5例が血清肝炎の診断基準を満たした. BUN, クレアチニンは軽度ではあるがII群がI群に比し有意に高値を示した. 術後の気管内挿管期間はI群がII, III群に比して有意に短く, 術後のカテコールアミンの使用量及び期間には差がみられなかった. 無輸血開心術の可否を決定する因子として術前赤血球量(0.08×体重×Ht値):yと体外循環時間(分):xの間にy=0.63767+0.23494logx, r2=0.082の有意の(p<0.01)相関がみられた. 限外濾過装置を併用しての無輸血開心術は, 肝, 腎機能への悪影響がなく術中の水分調節も容易で, 適応を拡大できると思われる. |