アブストラクト(40巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術中の虚血再灌流障害における心筋Ca2+代謝と過酸化脂質の変動
Subtitle :
Authors : 河合隆寛, 和田行雄, 河内秀幸, 大賀興一, 岡隆宏, 安田光徳*, 吉川敏一*
Authors(kana) :
Organization : 京都府立医科大学第2外科, *京都府立医科大学第1内科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 11
Page : 2040-2047
Year/Month : 1992 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環中の虚血再灌流障害における心筋ミトコンドリア内Ca2+-ATPase活性と過酸化脂質の変動について実験的に検討した. 雑種成犬(n=10)を用いた体外循環モデルで大動脈遮断時間を120分目し, くえん酸鉛法によりCa2+-ATPase活性の変動を調べた. その結果, 同活性は再灌流直前に一部で減弱したが, 再灌流直後は高い活性を示し, 60分後には再び虚血前より減弱する所見を認めた. 通常の電顕像では, 再灌流60分後に筋原線維の断裂, ミトコンドリアの膨化, 細胞内浮腫など一部で虚血による強い心筋障害を示した. 心筋逸脱酵素CK-MBは, 体外循環開始前に比して再灌流直後,60分後に有意に(p<0.01)増加した. 好気性代謝の有無について再灌流直後は虚血前に比して有意に(p<0.05)乳酸産生に傾き, excess lactate(ΔXL) redox potential(ΔEh)の値から同時点で心筋は有意に(ΔXL:p<0.05, ΔEh:p<0.01)嫌気性代謝を示した. 一方, 体外循環開始前をコントロール値(=1)としたときの脂質過酸化物質thiobarbituric acid(TBA)値は虚血前, 再灌流直後, 60分後にそれぞれ1.28±0.28, 1.62±0.33, 1.51±0.41とすべての時点で有意に(p<0.01)増加した. 抗酸化剤α-tocopherol(αTOC)はそれぞれ0.87±0.17(p<0.05), 0.69±0.12(p<0.01), 0.65±0.21(p<0.01)とすべての時点で有意に減少した. 以上より,Ca2+-ATPase活性検出における本法は心筋のviabilityを含め, Ca2+代謝をsubcellular levelで評価する方法として有用と思われた. 更に体外循環中虚血後再灌流時の心筋細胞内Ca2+過剰流入に活性酸素の関与が示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 虚血再灌流障害, Ca2+-ATPase活性, 過酸化脂質
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